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その口臭、歯周病のサインかも?臭いの原因と、根本から治す方法を歯科医が解説

こんにちは。兵庫県姫路市の歯医者、溝井歯科医院 院長の溝井優生です。口臭は、ご自身ではなかなか気づきにくい上、非常にデリケートな問題です。ご家族や親しい友人から指摘されて、深く悩んでいらっしゃる方も少なくないのではないでしょうか。

「毎日、丁寧に歯を磨いているはずなのに、なぜか口の臭いが消えない…」 「マウスウォッシュを使っても、その場しのぎにしかならない…」

もし、あなたがそんなお悩みを抱えているなら、その原因は、単なる磨き残しではなく、お口の中に潜む静かなる病、「歯周病」かもしれません。実は、成人の口臭の最大の原因は、この歯周病であると言われています。今回は、なぜ歯周病が特有の不快な臭いを引き起こすのか、そのメカニズムと、臭いを根本から断ち切るための正しい治療法について、詳しく解説していきます。

目次

  1. なぜ?歯周病が「不快な臭い」を発生させる、本当の理由
  2. これって歯周病?口臭と合わせて確認したい、危険度セルフチェック
  3. 歯磨きだけでは絶対に治らない!歯周ポケットという「細菌の巣」
  4. 歯科医院で行う、口臭の根本原因を取り除く「歯周病治療」とは
  5. 治療後の良い状態を維持し、再発を防ぐために最も大切なこと
  6. まとめ

1. なぜ?歯周病が「不快な臭い」を発生させる、本当の理由

歯周病による口臭は、ニンニクやコーヒーといった食べ物由来の臭いとは、根本的に発生源が異なります。その正体は、歯周病菌が作り出す「揮発性硫黄化合物(VSC)」というガスです。

歯周病が進行すると、歯と歯茎の間に「歯周ポケット」と呼ばれる深い溝ができます。この溝の奥深くは、酸素が届きにくい環境のため、酸素を嫌う性質を持つ「嫌気性菌」という種類の歯周病菌にとって、絶好の住処となります。

これらの細菌は、歯周ポケットの中に剥がれ落ちた粘膜の細胞や、出血によって出てきた血液成分に含まれるタンパク質を分解して、栄養源としています。そして、その分解過程で、非常に強烈な悪臭を放つガス、すなわち揮発性硫黄化合物を産生するのです。

代表的なガスには、以下のようなものがあります。

  • 硫化水素:腐った卵のような臭い
  • メチルメルカプタン:腐った玉ねぎや、生ゴミのような臭い
  • ジメチルサルファイド:生ゴミとキャベツが混ざったような臭い

さらに、歯周病が進行して歯茎から**膿(うみ)**が出るようになると、その膿自体も強烈な臭いの元となります。つまり、歯周病の口臭とは、「細菌が、血液や膿といったタンパク質を腐敗させて出す、強烈なガスの臭い」なのです。これでは、歯の表面をいくら磨いても、臭いが消えないのは当然と言えるでしょう。

2. これって歯周病?口臭と合わせて確認したい、危険度セルフチェック

「もしかして、自分の口臭も歯周病が原因かも…」と不安に感じた方は、以下の項目をセルフチェックしてみてください。口臭以外にも、歯周病は様々なサインを身体に発しています。

  • □ 朝起きた時、口の中がネバネバする
  • □ 歯磨きをすると、歯茎から血が出ることがある
  • □ 歯茎が赤く腫れていたり、ブヨブヨしていたりする
  • □ 昔に比べて、歯が長くなったように感じる(歯茎が下がってきた)
  • □ 歯と歯の間に、食べ物が詰まりやすくなった
  • □ 歯茎を押すと、白い膿のようなものが出ることがある
  • □ 硬いものが、以前より噛みにくくなった
  • □ 歯がグラグラと揺れる感じがする

いかがでしたでしょうか。もし、これらの項目に一つでも当てはまるものがあれば、あなたの口臭の原因は歯周病である可能性が非常に高いと言えます。症状が軽いうちに、できるだけ早く歯科医院を受診することをお勧めします。

3. 歯磨きだけでは絶対に治らない!歯周ポケットという「細菌の巣」

「歯周病が原因なのは分かった。じゃあ、もっと丁寧に歯磨きをすれば治るのでは?」と思われるかもしれません。しかし、一度進行してしまった歯周病は、残念ながらセルフケアだけで治すことは不可能です。

その理由は、歯ブラシの毛先が届く限界にあります。一般的な歯ブラシでは、歯周ポケットの深さ1~2mm程度までしか、汚れを掻き出すことができません。 しかし、歯周病が進行すると、歯周ポケットの深さは4mm、5mm、6mm…と、どんどん深くなっていきます。その奥深くには、歯ブラシでは決して届かない「聖域(サンクチュアリ)」が広がっており、そこが歯周病菌の巨大な巣窟となっているのです。

さらに、このポケットの中では、歯垢(プラーク)が石灰化して「歯石(しせき)」という硬い塊になっています。歯石の表面はザラザラしているため、さらに細菌が付着しやすくなるという悪循環を生み出します。この歯石は、歯に強力にこびりついているため、歯磨きで取り除くことは絶対にできません。

4. 歯科医院で行う、口臭の根本原因を取り除く「歯周病治療」とは

歯ブラシの届かない「細菌の巣」を破壊し、口臭の根本原因を取り除くためには、私たち歯科医師や歯科衛生士による専門的な治療が不可欠です。

  1. 精密検査 まず、歯周ポケットの深さを測定したり、レントゲン撮影をしたりして、歯周病がどの程度進行しているのかを正確に診断します。
  2. 歯周基本治療(スケーリング・ルートプレーニング) これが歯周病治療の根幹となります。
    • スケーリング:専用の超音波器具や手用器具を使って、歯の表面や歯周ポケットの中にこびりついた歯垢や歯石を徹底的に除去します。
    • ルートプレーニング:歯石を除去した後の、歯の根(ルート)の表面を滑沢に磨き上げ、細菌が再付着しにくい環境を整えます。
  3. ブラッシング指導(TBI) プロによるクリーニングと並行して、患者様ご自身に、正しい歯磨きの方法を習得していただくことも非常に重要です。歯ブラシの当て方から、歯間ブラシやフロスの使い方まで、あなたのお口の状態に合わせた最適なセルフケア方法を指導します。

これらの基本治療を行うことで、歯周ポケット内の細菌が劇的に減少し、歯茎の炎症が改善します。それに伴い、タンパク質の分解が抑えられ、あれほど悩まされていた口臭も、驚くほど改善していきます。

5. 治療後の良い状態を維持し、再発を防ぐために最も大切なこと

歯周病は、高血圧や糖尿病と同じ「生活習慣病」の一つであり、「完治」という概念がありません。治療によって一度症状が改善しても、日々のケアを怠れば、すぐに再発してしまう、非常に手強い病気です。

治療によって取り戻した健康な歯茎と、爽やかな息を維持していくためには、ご自宅での日々のセルフケアの実践と、歯科医院での定期的なプロフェッショナルケア(メンテナンス)が、生涯にわたって必要となります。

定期メンテナンスでは、ご自身のブラッシングだけでは磨ききれない部分の専門的なクリーニングや、歯周ポケットの深さのチェックなどを行い、再発の兆候がないかを監視します。この二人三脚の取り組みこそが、歯周病と口臭の悩みから、あなたを永続的に解放する唯一の方法なのです。

6. まとめ

口臭は、単なるエチケットの問題ではありません。それは、あなたの歯茎が悲鳴を上げ、助けを求めている「身体からの重要なサイン」なのです。

  1. 歯磨きをしても消えない口臭は、歯周病の可能性が高い。
  2. 臭いの正体は、歯周病菌が血液や膿を分解して出す、強烈なガス。
  3. 歯周病は、歯ブラシの届かない「歯周ポケット」の奥深くで進行する。
  4. 根本的な解決には、歯科医院での専門的なクリーニングが絶対に必要。
  5. 治療後も、セルフケアと定期メンテナンスで、再発を防ぐことが何よりも大切。

その不快な臭いを、マウスウォッシュでごまかし続けるのは、もう終わりにしませんか?原因を根本から取り除けば、口臭の悩みから解放され、自信を持って、人と笑い、話すことができるようになります。まずは勇気を出して、私たち専門家にご相談ください。

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